本町の財政状況は、バブル崩壊後の景気低迷による町税の減、国による地方交付税の削減などにより歳入一般財源が大きく減少している一方で、歳出面では公債費や負担金などの経常的経費が増大しており、非常に厳しい状況にあります。
町税は、政府の度重なる経済対策にもかかわらず地域経済は依然低迷しており、税収は年々減収しています。特に、個人町民税は、税額とともに納税義務者数も減少していることから、ピークであった平成9年度と比較して平成16年度には税額で2億円余り、納税者数で1千人余りの減少となっています。
※ 上記中、税額は個人町民税調定額、納税者数は個人町民税の納税者数(税額、納税者数ともに各年度7月1日現在)
地方交付税は、国の地方交付税削減の影響により、ここ数年は交付額が大きく削減されています。本町の地方交付額は、平成11年度の3,017百万円をピークに年々減少しており、平成15年度に至っては前年度比10.7%減の2,297百万円となりました。これは、従来、交付税として交付されたものが、地方の借入れとなる地方債への振替措置、更には小規模自治体へ重点的に交付する段階補正を見直すことによって、国は地方交付税総額の削減を図ってきたことによるものです。
このように、近年の決算額を見ると、町税及び地方交付税合計額のピークであった平成12年度と比較して、平成15年度の決算額は9億円余り減少しています。
≪ 町税及び地方交付税決算額の推移 ≫
(単位:百万円)
区分 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | 15年度 |
町税 | 1,716 | 1,732 | 1,740 | 1,660 | 1,545 |
地方交付税 | 3,017 | 3,011 | 2,804 | 2,573 | 2,297 |
合計 | 4,733 | 4,743 | 4,544 | 4,233 | 3,842 |
増減率 | 3.8% | 0.2% | ▲4.2% | ▲6.8% | ▲9.2% |
こうした歳入の減に対処するため、本町では、退職者の不補充による職員数の削減、職員給与の削減などによる総人件費の削減、物件費及び維持補修費の削減など、経常経費の抑制に努めてきました。人件費に関しては、平成9年度に230名であった職員数を、平成16年度には200名と13%削減するとともに、嘱託職員の雇用を抑制してきました。また、物件費に関しては、旅費支給規定の見直し、備品購入の抑制などにより平成15年度決算額は平成11年度と比較してマイナス36%と大幅に削減しています。
しかしながら、一方では過去の事業に係る借入金の返済に充てる公債費、広域的な事業に係る一部事務組合負担金、さらには高齢化社会に伴い事業費が年々増している老人保健、介護保険をはじめとする特別会計への繰出金などが増大しています。
《 職員数の推移 》
年度 | 9年度 | 10年度 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度 |
職員数(人) | 230 | 226 | 223 | 219 | 217 | 212 | 207 | 200 |
※ 職員数は、各年度の4月1日現在の職員数(但し、一部事務組合等への派遣職員は除く)
このように、町税及び地方交付税など経常的な歳入が減少し、一方で歳出は、公債費、負担金、繰出金等経常的な経費の需要が増していることから、本町の予算編成は年々厳しさを増しています。これは、職員数の削減などによる総人件費の抑制、物件費、維持補修費の削減など歳出削減努力にもかかわらず、これを上回る額で町税、地方交付税等が減少しているためです。
このため、平成15年度当初予算では、不足する一般財源に充当するため役場庁舎等建設基金から所要の額を繰替運用措置し予算を編成しました。この繰替運用の措置は、平成16年度も実施したところであり、現下の財政状況を勘案すると、平成17年度以降も繰替運用の継続実施は避けられないものと見込んでいます。
こうした状況から、経常収支比率をはじめとする財政指標は年々悪化しています。特に経常収支比率は、ここ数年右肩上がりを続け、平成15年度決算に至っては経常収支比率が初めて100%(経常一般財源に減税補てん債及び臨時財政対策債を含まない場合)を突破しました。これは、経常的な収入だけでは経常的な支出を賄えないことを示すものであり、本町の財政状況は、まさに危機的な状況となっています。
※ 上記は、経常的な収入及び支出の年度別決算額の推移(一般財源ベース)であり、経常的収入は減税補てん債及び臨時財政対策債を除く
※ 上記中、経常収支比率Aは、経常一般財源に減税補てん債及び臨時財政対策債を加えた指数であり、経常収支比率Bは、これらを除いた指数
本町では、平成16年度を初年度とする今後5年間の財政収支を見込んだ「中期財政見通し」を以下の条件の下で試算しました。
○ 全般的な事項
・「三位一体の改革」については、具体的な内容が明らかとなっていないことから見通しにはその影響額を反映せずに試算する。
・経済成長率は、内閣府作成の「構造改革と経済財政の中期展望―03年度改定」に基づく成長率により試算する。
・職員数は、平成16年4月1日現在の職員数(200名)を基本とし、見通し期間中の職員数は各年度とも一律200名として試算する。
○ 歳入に関する事項
・「役場庁舎等建設基金」をはじめ、基金からの繰入を見込まずに試算する。
○ 歳出に関する事項
・終期が定まっている事務事業を除き、原則として16年度実施している全ての事務事業を継続実施することとして試算する。
・普通建設事業については、継続事業のみを計上し、新規事業については収支見通しに反映せずに試算する。
こうした条件のもとで試算した「中期財政見通し」の概要は、次のとおりです。
(1)累積する財政赤字
1.歳入の見通し
平成16年度以降の歳入の見込みについては、現下の経済財政状況から、町税及び地方交付税が引き続き減少していくものと見込まれます。
○町税
町税に関しては、個人町民税の納税者数が今後も減少することが見込まれるとともに、地域経済の回復の遅れから企業業績も芳しくなく、法人町民税の伸びも期待できる状況にはありません。加えて、本町の主要な税目である固定資産税に関しても、課税標準額の低落に歯止めがかからない状況となっています。
こうしたことから、町税収入は依然として厳しい状況が続くと予想されます。
≪ 町税収入見込額 ≫
(単位:百万円)
区分 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
個人町民税 | 379 | 375 | 360 | 349 | 338 |
法人町民税 | 91 | 90 | 88 | 87 | 87 |
固定資産税 | 889 | 906 | 865 | 866 | 872 |
その他 | 163 | 161 | 157 | 154 | 149 |
合計 | 1,522 | 1,532 | 1,470 | 1,456 | 1,446 |
前年比増減率 | ▲1.4 | 0.6 | ▲4.0 | ▲1.0 | ▲0.6 |
※ 税制は、現行税制により試算
○地方交付税
地方交付税は、地方歳出の財源を補償する財源補償機能と、税収の偏在に伴う財政力格差を是正する財政調整機能に大別できます。国は、地方財政計画の歳出を徹底して見直すことによりその規模を縮小し、地方交付税を抑制する観点から、財源補償機能を将来的に廃止することを視野に入れています。
また、地方交付税算定の基礎となる本町の国勢調査人口、農家数、小中学校の児童生徒数などは何れも減少を続けています。加えて、市町村合併特例法により地方交付税の配分は今後、合併された市町村へ重点配分されることが見込まれます。
こうしたことからも、本町の地方交付税は今後も引き続き減少し、平成20年度の交付額は、平成2年度の水準にまで落ち込むものと見込んでいます。
≪ 地方交付税見込額 ≫
(単位:百万円)
区分 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
普通交付税 | 2,035 | 2,015 | 1,958 | 1,923 | 1,879 |
特別交付税 | 150 | 135 | 121 | 110 | 100 |
合計 | 2,185 | 2,150 | 2,079 | 2,033 | 1,979 |
前年比増減率 | ▲4.9% | ▲1.6% | ▲3.3% | ▲2.2% | ▲2.6% |
2.歳出の見通し
本町の財政構造は、実質的な経常収支比率が100%を超える状況にあり、財政の硬直化が一段と進んでいます。平成16年度以降も、人件費、公債費等義務的経費の支出が依然として高く、それに加えて一部事務組合への負担金などの補助費等、特別会計への繰出金が今後も増大していくことから、財政のさらなる悪化が見込まれます。
人件費は、現在の行政水準を維持する観点から平成17年度以降の職員数を平成16年度と同様に200名を維持した場合、若干の増減はあるものの1,750百万円で推移すると試算されます。
補助費等に関しては、石川地方生活環境施設組合で施工した一般廃棄物最終処分場に係る償還金が増加していくため、平成18年度をピークに増大していくものと試算されます。
繰出金は、介護保険特別会計への繰出しが給付費の増加に伴い増大し、加えて、平成20年度からは宅地造成事業への繰出しも余儀なくされると見込まれます。
一方、町の借金である町債の現在高は、平成7年のふくしま国体開催に伴う総合運動公園整備事業に伴う借入れにより大幅に増加し、その後も、農道整備事業などの国の経済対策に呼応した事業により残高が累増してきました。今後は、普通建設事業に充当できる一般財源が不足していることから普通建設事業費が減少していくと見込まれます。従って、新たな借入れは償還元金を下回ることが予想され、債務負担行為とともに町債の現在高は、徐々に減少していくものと見込まれます。
≪ 町債及び債務負担行為現在高 ≫
(単位:百万円)
区分 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
町債 | 7,664 | 7,253 | 6,914 | 6,754 | 6,591 |
債務負担行為 | 1,695 | 1,678 | 1,456 | 1,246 | 1,052 |
合計 | 9,359 | 8,931 | 8,370 | 8,000 | 7,643 |
3.収支見込額
このような財政状況のもとで現行の行政水準を今後とも維持した場合、年度別の収支見込は、次のとおりとなります。
≪ 収支見込額 ≫
(単位:百万円)
区分 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | |
歳入 | 町税 | 1,522 | 1,532 | 1,470 | 1,456 | 1,446 |
地方交付税 | 2,185 | 2,150 | 2,079 | 2,033 | 1,979 | |
地方債 | 777 | 396 | 475 | 613 | 572 | |
その他 | 1,841 | 1,455 | 1,425 | 1,405 | 1,419 | |
計 | 6,325 | 5,533 | 5,449 | 5,507 | 5,416 | |
歳出 | 人件費 | 1,687 | 1,766 | 1,750 | 1,761 | 1,745 |
公債費 | 1,242 | 987 | 980 | 928 | 887 | |
補助費等 | 1,150 | 1,154 | 1,191 | 1,183 | 1,165 | |
繰出金 | 560 | 576 | 580 | 587 | 579 | |
その他 | 1,656 | 1,439 | 1,535 | 1,629 | 1,605 | |
計 | 6,295 | 5,922 | 6,036 | 6,088 | 5,981 | |
単年度収支 | 30 | ▲389 | ▲587 | ▲581 | ▲565 | |
累積収支 | 30 | ▲359 | ▲946 | ▲1,527 | ▲2,092 |
※ 平成16年度の見込額は、予算現額をベースとした決算見込額であり、役場庁舎等建設基金からの繰入を50百万円に減額して実行することを前提として試算(財政調整基金からの繰入は予算どおり執行)
このように、平成16年度は辛うじて決算剰余金を見込めるものの、基金からの繰入をせずに現行の行政水準を維持継続した場合、平成17年度以降は、毎年収支の不足が生じることとなります。この収支不足額は、翌 年度の歳入で前年度の歳出を賄う「繰上充用」の措置を講ぜざるをえない状況となります。
このため、平成20年度末の累積の赤字額(実質収支)は、2,092百万円と見込まれています。
※ 上記中、平成15年度までは決算額、平成16年度以降は見込額
(2)財政再建団体転落の危機
1.財源不足額と基金の充当
このように、現在の行政水準を維持した場合、平成20年度末には2,092百万円の累積赤字が発生すると試算されます。これに対し、本町が現在保有している基金のうち、財政調整基金の平成15年度末現在高は164百万円、減債基金が56百万円、役場庁舎等建設基金990百万円となっています(財政調整基金のうち60百万円、役場庁舎等建設基金のうち50百万円は、平成16年度で取崩しを前提)。これら主要基金を今後全て財源補てんとして措置しても、平成20年度には992百万円の累積赤字を生ずることとなります。
≪ 財源不足額と基金残高 ≫
(単位:百万円)
区分 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
歳入総額A | 6,325 | 5,533 | 5,449 | 5,507 | 5,416 |
歳出総額B | 6,295 | 5,922 | 6,036 | 6,088 | 5,981 |
単年度収支C(A-B) | 30 | ▲389 | ▲587 | ▲581 | ▲565 |
↓
基金を充当しても
基金繰入額D | (110) | 359 | 587 | 154 | 0 |
差引収支C+D | 30 | ▲30 | 0 | ▲427 | ▲565 |
累積収支 | 30 | 0 | 0 | ▲427 | ▲992 |
基金残高 | (1,100) | 741 | 154 | 0 | 0 |
2.財政再建団体
地方自治体は、標準財政規模の20%を超える赤字が発生した場合、「地方財政再建特別措置法」に基づく「財政再建団体」(後述参照)に該当することになります。本町では、標準財政規模の20%とは、おおよそ8億円でありこの赤字額が「財政再建団体転落ライン」となります。収支見通しでは、平成18年度の累積の赤字額を946百万円(役場庁舎等建設基金などを充当しても平成20年度には992百万円の赤字を見込む)と試算しており、「財政再建団体」への転落が現実のものとなっています。
こうした事態を回避するためにも、行財政改革は本町にとって急務となっています。
※「財政再建団体」とは
「地方財政再建促進特別措置法」により、実質収支比率(赤字比率)が市町村で標準財政規模の20%を超えた場合(本町では赤字額が8億円を超えた場合)に指定を受けることになります。財政再建団体の指定を受けると、「自主再建方式」と「準用再建方式」のいずれかを選択して再建を図らなければなりません。
「自主再建方式」は、自治体自らが再建計画を立案、実施しますが、地方債の起債制限を受けるため多くの事業が事実上実施で困難となります。また、国からの財政援助や優遇措置が無くなるので、行政サービス全般に制約がかかることとなります。
一方、「準用再建方式」は、地方議会の議決と総務大臣の承認を受けた再建計画に基づいて予算編成が実施され、財政の立て直しを行う再建方式です。総務大臣の承認を受けるため、自主再建方式と比べて実質的な制約が少ないといわれています。しかし、国の指揮、監督が入ることになり、様々な使用料、手数料の引き上げや自治体が単独で行っている事業の見直しを求められることとなり、地方自治体としての自治権が制約されることとなります。